「BLACK BITTER」 (お題: うつくしいくに)
嬉しさのあまり、思わず大口でかじりついた。
つややかな、その光沢。
口に広がる苦さと甘さ。
しっかりと噛みしめた時、思わず喉が詰まりそうになった。
今思えば、あれがシグナルだったのだと思う。
口の中に不思議な食感があったと思い出したのは、その記事を見た時だった。
(2月15日)「チョコレートに人の指混入――バレンタイン商品、製造過程の事故」
「別れの日」 (お題: おにはそと ふくはうち)
「おめでとうって、最後に笑って言いたかったのにね」
にこりともせず、冷え切った表情で彼女は告げた。
春の穏やかな風も、僕たち二人を取り巻く空気を暖めることはできなかった。
そして、彼女は再び口を開く。
「とにかく、このままじゃ済まさないわ」
振り返らなくても、僕の背に多くの視線が集中していることはわかる。
唇を強く噛みしめたまま、僕は衆人環視の中、じっと黙っていた。
吐き出した溜息を彼女は大きく吸い込むと、怒声を張り上げた。
「うっかり忘れたで三年間、給食費踏み倒して逃げるなんて許さないわよ!」
力いっぱい教壇で叫んだ先生の怒りは凄まじく、僕の卒業は本当に取り消された。
「詰問」 (お題: そめいよしの)
そらとぼけたってムダよ。
目をそらさないで、ちゃんと話して。
意地を張ってると、オシオキするわよ?
よく見てごらんなさい、ホラ。
執拗に責められて、彼はついに白状した。
「野太い声のオッサン刑事がパンチラしながら迫るから・・・」と容疑者は泣いていた。
「旅立ち」 (お題: がそりんだいねあげ)
「学校に最近来ないと思ってたら、留学するって本当なの!?」
「そうだ……まだ言ってなかったけど」
「留学だなんてそんな大事なこと、どうして黙ってたのよ!」
「ん……まあ、いろいろと悩んだりしててな」
「だったら一言くらい相談してくれれば良かったのに……!」
「いや、こういうことは自分で決めないとダメだろ?」
年来の夢を叶えるため、彼は別れを告げるべく立ち上がった。
「ああ、それじゃ行ってくるよ――駅前留学」
ゲンコツが次の瞬間、宙を舞った。
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