ジョン・エヴァレット・ミレイ「オフィーリア」

P.R.B 《2》

 P.R.B――その正式名称は、Pre-Raphaelite Brotherhood。日本では「ラファエル前派」と訳される。
 アカデミーの硬直した教育に嫌気が差し、美術界を改革すべく結成された、若き芸術家たちの集団である。
 ロンドンのナショナル・ギャラリーがラファエロの「キリストの変容」の複製を長年展示していたこともあり、ラファエロ以降、美術が堕落していったとして自らを「ラファエル前派」と名乗ったのだという。
 その活動の初期、彼らにインスピレーションを与え、幾度もモデルを務めた女性がいる。

 彼女の名は、エリザベス・シダル。

 中でもジョン・エヴァレット・ミレイによる『オフィーリア』は、ラファエル前派の代表的な作品として名高い。
 言わずと知れたシェークスピアの『ハムレット』を題材にしたその作品は、川に身を投げて流されてゆくオフィーリアの姿があまりにも真に迫っているとして、絶賛された。
 このオフィーリアのモデルを務めたのがエリザベス、当時二十歳。そして、この仕事を引き受けたことが、ラファエル前派の一人、ロセッティとの運命的な出会いを生んだのである。

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