「散歩日和」
暖かな日差しに誘われて、公園には散歩に来た人々や犬の姿が多く見られた。
彼もまたペットの散歩に来ていたのだが、ベンチで一休みしていると、お隣の奥さんに声をかけられた。
「あら、あなたもお散歩ですか」
「ええ、こう天気がいいと、外に出てきたくなりますからね」
そう言いながら、彼はクロの頭を撫でてやった。
「おとなしくして、お利口さんね。いくつだったかしら」
「今年で五歳になります」
毛の色から名づけられたクロは無口で、ほとんど声を出さない。
静かにお座りしている姿に奥さんは目を細め、そして手を振ってその場を去っていった。
「さ、クロ。僕たちも帰ろうか」
彼は手綱を引いて、立ち上がった。
木漏れ日が眩しい新緑の季節。
公園にも道路にも、ペットの散歩をする犬たちと、手綱を引かれる人間たちの姿であふれ返っていた。
|