お題 「写真」


卒業シーズンの出題。2本続けてどうぞ。

「受け継がれるもの」



押入れの整理していると、突然のなだれに見舞われた。
頭上から大量に降り注ぎ、舞い散ったのは、古びた写真たちだった。
何となく取り上げたセピア色の一枚を見て、僕は目を丸くした。

「ああ、それは祖父さんの若い頃だな」

様子を見に来た父が、後ろからひょいと覗き込んで声をかけてきた。
僕は無言のまま、今度は別の色あせたカラー写真を差し出した。

「懐かしいな。そいつは俺の青春時代だよ。なかなかの男前だろ?」

父の声を聞きながら、僕は二枚の写真を凝視していた。
別に、若い頃の父の男ぶりに惚れ惚れしていたわけではない。
ちょうど今の僕と同じ年頃の二人が、まるっきり僕と生き写しだったからだ。

懐かしそうに写真の山を掘り起こす父の後ろ姿を見つめながら、僕は小さくつぶいた。

「遺伝……か」

光り輝く父の後頭部のまぶしさと、受け継がれた不幸なDNAのために、僕はそっと目を閉じた。


「君からの便り」



しばらく会っていなかった友人から、結婚の知らせが葉書で送られてきた。
裏返して二人の写真を見た瞬間、私は郵便受けの前で凍りついた。

長い間そうしていたのだろう、不審に思った妹が後ろから覗き込んできた。

「どうしたの、突っ立ったまま。何、その人もしかして元彼?」

指を差してくる妹を振り返り、私は慌てて写真を背中に隠す。

「ち、違うわよ、ただの友達よ!」
「ふーん。それにしては随分ショック受けてたみたいだけど?」

妹は疑わしげな視線を向けてくるが、私の言葉に嘘はない。
送り主の新郎は、単なる男友達の一人に過ぎない。

ただ、その隣で微笑むドレス姿の新婦が、私の元彼だったというだけのことだ。


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