「受け継がれるもの」
押入れの整理していると、突然のなだれに見舞われた。
頭上から大量に降り注ぎ、舞い散ったのは、古びた写真たちだった。
何となく取り上げたセピア色の一枚を見て、僕は目を丸くした。
「ああ、それは祖父さんの若い頃だな」
様子を見に来た父が、後ろからひょいと覗き込んで声をかけてきた。
僕は無言のまま、今度は別の色あせたカラー写真を差し出した。
「懐かしいな。そいつは俺の青春時代だよ。なかなかの男前だろ?」
父の声を聞きながら、僕は二枚の写真を凝視していた。
別に、若い頃の父の男ぶりに惚れ惚れしていたわけではない。
ちょうど今の僕と同じ年頃の二人が、まるっきり僕と生き写しだったからだ。
懐かしそうに写真の山を掘り起こす父の後ろ姿を見つめながら、僕は小さくつぶいた。
「遺伝……か」
光り輝く父の後頭部のまぶしさと、受け継がれた不幸なDNAのために、僕はそっと目を閉じた。
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