[そして帰路へ]

どんなものにも終わりはある。そう、このハプニング続出の旅にも、ついに終わりの時がやってきたのです。そしてこの長かった(長引かせた)連載も。
便が遅れたため、することもなくただひたすらぼうっと待ち続けていましたが、ようやく到着したもようです。この時、暇つぶしに聴いていたMDはすでに2巡目に入っています。
ああ、やっと本州に帰れる! 別に四方を海に囲まれた孤島でもないので、ここが九州だろうとそんなに違いはないはずなのですが。いずれにせよ疲れて重くなった腰を上げ、我々は搭乗口に向かいました。
乗った機は行きのよりもやや大きく、ビジネスクラスのシートもついています。我々の席はそのすぐ近くの窓側。もちろんこれは早めのチェックインの賜物です。(そのために余計に待つことになったのですが)
ぐぐっと体に重力がかかって加速、そして離陸。さようなら、長崎。あまりに遠い異国だった。

長崎上空。機内にて撮影(見えにくいが下は長崎湾)

機内は行きの小さな飛行機(ANA)とは違って足を伸ばすスペースもあり、意外に広い。凄いぞJAL。この旅行の少し前にニアミス事故が起こったことなんて忘れそうになります。
現在(2001年10月)は飛行機というと「乗っ取り」だの「自爆テロ」だのという不吉な文字を連想させますが、当時はまだニアミスが記憶に新しかったんですよね。旅行前の打ち合わせでRとその話をしていましたし。
しかも機内サービスで飲み物もくれるし、機内限定グッズも売りにやってきます。まあ、それだけに広いということなんでしょうけど。行きのミニサイズはあまりに狭くてそんな余裕などありませんでしたから。さらに言えばこちらのスチュワーデスさんは若くて美人揃い。これは凄い。
実に色々なことがありすぎて、時には裏切られもしたけれど(期待を)、最後には良いことが待っていたではありませんか。さあ、あとは着陸を待つだけ。のんびりと音楽でも聴いて時を過ごそうか。
そんなことを思っていると。

「――――!?」

いきなりぐらぐらと揺れ出す機体。何だ? いったい何があったんだ!?
気づけばオリジナルグッズを売り歩く振売のようなスチュワーデスさんの姿もありません。

振売(ふりうり。室町時代の行商人)

もしかして非常事態ですか? またしてもニアミス? しっかりしてくれ、管制塔。このまま我々は生きて帰れるんでしょうか。何かあっても骨も拾ってもらえませんよ。
そして流れ出す機内アナウンス。
「現在、大分上空にて乱気流が発生しております」
何ぃ? 乱気流だあ!? どうして何事もなく帰るということができないんだ!!
(どうでもいいけど乱気流というと同タイトルの映画を思い出します。あれは乱気流で揺れる機内でハイジャック犯と戦うスチュワーデスの話でしたが。しかし他の乗客乗員は皆殺しになる……ああ、なんて縁起の悪い)
機体はさらにひどく揺れ始めます。――思えば到着が遅れたのも天候不順が理由でしたっけ。もしかしたらあまり回復しないうちに見切り発車したんじゃないでしょうね。
――そういうわけで。
ゆらんゆらん ぐらんぐらん がたんがたん
と、揺さぶられ続けるわけです。ベルトは当然着用。トイレにも立ち上がってはいけないと諫める赤いランプもつきっぱなし。
こんな過酷な状況はどこかで覚えがある。それもついさっき。
そう、ここにもまたハンスの呪いが!!
しつこいぞ、ハンス! いったいいつまで人につきまとう気だ!?
……もう、怒る気力さえ失せてきます。胃がひっくり返りそうです。始終揺れてりゃ慣性の法則も何もあったもんじゃありません。
やがて空も暗み始め、黒い地上に色とりどりの光点が見えてまいりました。この夜景は地元では見られません。何しろ近所のトンカツ屋が潰れたおかげで、街灯のない道が真っ暗になって困るぐらいなんですから。そもそも盆地なので日没が早いし。とまあ、これは余談。
ようやくのこと羽田に到着です。大地に足をつけても何やらふらふらとして覚束ないですが。
しかし家に着くまでが旅。失念しかけていましたが、これからモノレールと特急に乗らなければならないんですね。所要時間、およそ4時間。中途半端に都会から遠い田舎人は辛い。
わあい、朝から乗り物づくしー。と、喜べるような状況ではないのに。
普段は乗り物好きで、動物園より遊園地派な人間ですが、生まれて初めてぐらいのひどい悪酔いに苦しんでいる時は、嬉しくもへったくれもありません。
……まあ、あらかじめとっておいた指定席にも遅れず乗れたし、これ以上悪いことはなかったということだけ記しておきましょうか。
ちなみに帰宅したのは午後11時近く。こうして疲労と悪酔いをおみやげに、2泊3日の長崎旅行は幕を閉じたのでありました。

(了)

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