十五夜うさぎと灰色うさぎ



 野うさぎを見送った月うさぎは、月へと向かうその影が消えてしまうと、丘の上にごろりと横たわりました。

「ああ、地上の風は気持ちいいなあ」

 夜風が草木を揺らす、さわさわという音が、月うさぎの耳には心地よく感じられました。
 月は岩や砂ばかりで、緑の生い茂る草原を見下ろすたびに、彼はうらやましくて仕方がなかったのです。
 丘に寝転がったまま、月うさぎは自分の住まいである月を見上げました。

「地上から見ると、こんなにも月はきれいなんだなあ」

 闇を丸く切り取ったような月は、目にまぶしいほど光り輝いています。月にいる頃は、足下が光ったりしなかったのに、こうして遠くから見ると不思議なくらい明るくて、月うさぎはとても驚いていました。

「明日は十五夜……か」

 まんまるに見える月は、よくよく目をこらすと、少しばかり欠けています。そう、明日の晩が本当の十五夜。月が一番大きく、美しく輝く日なのです。
 今まで月に住んでいる時は、「月が一番美しい夜」だと言われても、いまひとつピンと来ませんでしたが、こうして地上から見上げると、その意味がようやくわかりました。前夜でもこれほど素晴らしいのだから、明日の晩はなおいっそうだろう、と。

「これなら、地上のうさぎが跳びはねたくなるのもわかるなあ」

 地上のうさぎは、十五夜の月を見るとなぜか元気に跳び回っていました。その理由をようやく理解した月うさぎは、明日の晩になったら、他の野うさぎたちと一緒に思う存分飛び跳ねようと心に決めました。

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